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これまでの(いくつかの)研究 (2006年5月時点)

ここでは、これまでに行ってきた研究のいくつかを紹介しています。

各項目に1つ程度の論文を書いていますが、詳細についてはプロフィールから「その他の業績」を参照してください。

■チンパンジー・アイでの記憶研究

 ヒトの記憶は大きく分けると、長期記憶と短期記憶に分けることができます。
 短期記憶は、コンピュータのメモリのような働きをしており、電話をかけるときにいったん番号を覚えたり、会話のやりとりで、相手の言ったことを覚えておくときに使用されます。
 ヒトの場合、これが7プラスマイナス2項目であることがわかっていましたが、チンパンジーの場合も、5プラス1項目であることを確認しました。

 →画面に6つの数字が出され、順に選んでいくところの連続写真

Numerical memory span in a chimpanzee.Nature, 403, 39-40. 2000

■チンパンジー胎児の学習・記憶研究

 「胎児は学習するか?」という問いを立てて、胎児は母体内で学習し記憶することを世界で初めて示した研究。従来は、外科的処置によってネズミの母体から胎児を取り出して学習させる研究か、ヒトの胎児が子宮外から与えられた音を、生後好んで聞くという間接的な証拠しかありませんでした。

 →母体を通じて学習させているところ(上)と生後のテストで、母体内で聞いた音に対して反応している様子。

Associative learning and memory in a chimpanzee fetus:
Learning and long lasting memory before birth.
Developmental Psychobiology, 44, 116-122. 2004年


■無脊椎動物(ザリガニ)の学習研究

 多くの無脊椎動物は学習し、記憶します。ただし、脊椎動物ほどの自由度はないようで、学習性の行動が反射などと拮抗することがあります。
 このザリガニを対象とした研究では、ザリガニが危険信号を学習することと、その危険から回避するときに、もともと危険に遭遇したときに反射として発現される行動(尾を振って後ろへ飛びのく)を用いることができないこと(つまり、これは反射専用に設計されている)ことがわかりました。
 
Avoidance learning in the crayfish (Procambarus Clarkii) depends on the predatory imminence of the unconditioned stimulus: A behavior systems approach to learning in invertebrates. Behavioral Brain Research, 150, 229-237. 2004年

■動物の思考に関する研究:動物は論理的か?

 動物はいろいろなことを学習します。しかし、いったん学習したことを、「不要」と判断して、その情報にもとづく行動をやめるでしょうか?
 これは「回顧的推論」と呼ばれる推理の根底にある問いです。回顧的推論とは、時間的に遡ってある事象の原因を推定することともいえます。ヒトではそのようなことをたやすく行うのに、これまで動物でそのような推論を行うとの証拠は得られていません。私も否定的なデータをたくさん出しました。かつて、ヒトと動物の思考の違うところといわれたものです。現在、サルで検討中です。
 
Evidences for within-compound learning in an instrumental conditioning with rats, Behavioural Processes, 44, 317-322. 1999年



■強化学習の研究

 知ってる人しか知らないのですが、私の研究でもっとも論文が多いのがこのテーマに関するものです。古典的条件づけの理論的・実験的を行っていました。
 一連の研究を学位をいただきました。
 上のチンパンジーの胎児の研究もこの1つと位置づけられるます。
 
Between- and within-subjects effects of US duration on conditioned suppression in rats: Contrast makes otherwise unnoticed duration-dimension stand out. Learning and Motivation, 27, 92-111.1996


■その他の動物での学習研究

 うまくいきませんでしたが、キンギョやカメでも実験してきました。宮下さんと共同でおこなった。ウマの実験はうまくいきました。

たとえば、信号が●と▲のときに、左右のどちらを選ぶと正解かを学習するときに、単に正解すれば餌を与えるというのではなく、●で正解のときにはニンジン、▲で正解すれば固形飼料というように、信号とよい結果を1セットにして区別すれば、弁別学習は促進されます。

 ほかにもイルカの行動観察などもやりました。
名古屋港水族館でイルカやシャチの認知研究(実験)をしてみたいです。

■ヒトの注意に関する研究

 ヒトはヒトの顔、とくに視線の方向に強く注意が惹かれます。そのことを不思議に思ってはじめた研究です。最初は「視線にひきつけられる注意」に関心があったのですが、最近は視線に限らず、注意の機能をおもしろいと思っています。下の論文は、ターゲットの出現頻度(正確にいえば、出現しない「空振りの」試行)が多いときには、ターゲットが出現するまでの時間が長くなればいったん注意を解放するようで、そのため先に注意していたところにターゲットが現れると、その発見が遅れる「復帰抑制」とよく似た現象を発見しました。ターゲットが必ず出現するとこの現象は生じません。
 ほかにもいろいろ調べています。そのうち、論文にします・・・。

The role of attention in the facilitation effect and another "inhibition of return". Congnition, 2006年

■自閉症に関する研究

【注意】
 注意の機能を、焦点化・維持・切り替えと分け、それぞれの機能に対応した課題を行ったところ、自閉症児は、従来から報告されてきた注意の切り替えのみならず、注意の維持(特に音韻)の成績も低いことがわかりました。

【言語獲得】
 子どもの言語で、ことばを話し出す少し前に、発話(なん語)と身体の動きが同期することがしばしば報告されてきましたが、言語遅滞があった自閉症児も、一語文、二語文が出現するそれぞれの時期に対象を指差す行動が見られました。

自閉症児のことばの発達と手の動きの関係 「ジェスチャー・行為・意味」 第7章 齋藤洋典・喜多壮太郎編, Pp. 142-159, 共立出版 2002年



その他の業績

   
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