ヘビを見たことのないサルも、ヘビの写真をすばやく発見する

 

“Rapid Detection of Snakes by Japanese Moneys (Macaca fuscata): An Evolutionarily Predisposed Visual System.”

Shibasaki, M. & Kawai, N. (2009). Journal of Comparative Psychology, 123,  131-135.

 

(論文の要約)

 人間がヘビに対して特殊な反応をすることが長らく知られて来た。野生のサルはヘビを怖がるが、実験室で生まれ育ったサルはヘビを怖がらないことから、ヘビの恐怖は、他のメンバーが怖がるのを観察した学習の結果であると考えられて来た。

 しかし本論文では、生後一度もヘビを見たことの無いサルも、ヘビをすばやく見分けることが示された。そのことから、ヘビに対する敏感な反応は生得的であり、少なくともサルと人間の共通の祖先から受け継いだものであることを示唆している。

 実験は、3頭のニホンザルが、コンピュータ画面に格子状に並べられた9枚の写真から、1枚だけ種類の異なる標的写真を選ぶという方法で行われた。標的写真がヘビの写真で、その他が花の写真であるときのほうが(下の写真)、花の写真が1枚だけあり他がヘビの写真であるときよりも反応するまでの時間が早かった。色を手がかりにしている可能性を排除するために、白黒写真を使っても同じ結果が再現された。

 人間でも花の中からヘビなど怖いものをすばやく見つける。これは、眼から脳の領域を順次通る通常の経路ではなく、情動を司る扁桃体を経由した「すばやいが粗い」分析経路を通るためだと考えられる。「ヘビだと思って驚いてよく見たら、ロープだった」という経験は、この経路による知覚の実例である。

 ヘビを優先的に処理する視覚システムはすでにサルの頃からあったと考えられる。